QRコード決済は日本におけるキャッシュレス推進の鍵となるか?

2018年12月、ソフトバンクとヤフーが共同で設立したQRコード決済サービスであるPayPayが消費者に100億円を還元するキャンペーンを実施し、大きな話題となりました。QRコード決済は現在中国で爆発的に普及している決済方法であり、中国国内におけるキャッシュレス化を推進させる大きな要因となっています。2015年時点で中国は60%の決済がキャッシュレスで行われていたのに対し、日本ではわずか18.4%とのその差は歴然です。

 

キャッシュレス後進国の日本

日本でキャッシュレスがなかなか進まない原因として、印刷技術が高く偽札が出回りづらい、また犯罪率が低く現金を持ち歩くリスクが比較的低いといった文化的な要因に加えて、例えばクレジットカードや交通系電子マネーでの支払いは、端末導入費用などの初期費用に加えて店舗側が売り上げの3~5%ほどの手数料を負担しなくてはならず、導入に消極的な小売店が多いことが挙げられます。

一方で、現金決済の弊害も数多く指摘されています。現金の輸送やATMの設置・維持に人手とコストがかかることや、店舗側としても現金の集計や釣り銭用の小銭の用意などの手間がかかることなどが代表的なものです。日本では労働力の不足が深刻な問題となっており、会計にかかる手間を減らすためにも、キャッシュレス比率を拡大していく必要があるでしょう。

日本政府も他の先進国と比べて日本におけるキャッシュレスの普及率が取り立てて低いことを懸念し、2027年までにキャッシュレス比率を40%まで増加させることを目標に掲げています。2020年のオリンピック・パラリンピック、そして2025年の大阪での万博の開催に向けて海外からの日本への観光客も増加が見込まれており、日本への来訪者への利便性向上という点においても、さらなるキャッシュレス推進への取り組みが期待されます。

 

電子マネーが普及しきらなかった理由

QRコード決済が広まる以前から、日本においてキャッシュレス決済の代表格を担ってきたのが、Suicaに代表されるFelicaを使った非接触式ICカードを使った決済方法、いわゆる電子マネーによるものです。Felicaは世界でも屈指の乗車人数を誇る東京の公共交通機関での利用を前提に開発されたため、その処理速度は0.1~0.2秒と他国で採用されている非接触式ICカードと比べても非常に高速です。

実際、AppleGoogleなどの世界的な大手企業はApple PayGoogle Payなどの自社決済サービスにFelicaを採用しています。しかし、これらのサービスは日本でも2016年から開始されており、スマートフォンのみで支払いを完了できるにもかかわらず、爆発的な普及には至っておらず、根強い現金主義を払拭できていないのが現状です。

この背景には、前述の店舗側の消極的な姿勢に加えて、消費者の観点から以下の理由が挙げられます。一つ目は、電子マネーだけでもSuica、PASMOEdyWAONnanacoau walletなど複数のサービスが乱立しており、どれか一つのサービスに絞ることが困難なことです。全ての電子マネーがスマートフォンでの決済に対応しているわけではなく、その結果店舗ごとにスマートフォンとカードで複数の電子マネーを使い分けるなど、消費者にとっての利便性が低くなっていると考えられます。また、多くの小売店が今でも紙ベースの原始的なシステムでポイント付与を行なっていることも大きな理由として指摘されています。キャッシュレス決済の大きな利点は重たい財布を持ち歩くことなく、会計の際も素早く手軽に処理が行えることですが、各店舗のポイントカードを財布に入れて持ち歩き、会計のたびにその店舗のものを探し出す必要がある場合、いずれにせよ財布を出すのなら現金で支払ってしまおうと考える人が多いのにも頷けます。

金銭的な負担が大きいために現金を好む店舗側と、原始的な意味での財布を手放すことを躊躇う消費者側、双方にとってキャッシュレス決済の利益が不明確なことが、現在のキャッシュレスへの取り組みの停滞を引き起こしている原因であると考えられます。

 

QRコード決済は電子マネーを超えられるか?

しかし、店舗側の負担という点において、QRコード決済には一筋の光を見ることができます。日本におけるQRコード決済サービスの草分けとも呼べるLINE Payは、2018年6月に店舗用決済アプリの提供と今後3年間のアプリ決済における手数料を無料にすることを発表しました。PayPayも同様の政策を打ち出しており、店舗側の導入へのハードルを低くして普及率を上げることを狙いとしています。

一方で、複数のサービスが乱立している状況はQRコード決済でも同じです。現在国内で主に使われているQRコード決済サービスにはLINE Pay、PayPay、Origami楽天Payd払いなどがあり、つい先日コンビニエンスストアの大手であるファミリマートも独自のQRコード決済システムであるファミペイを2019年夏を目途に開始予定だと発表しました。新たな分野のため新規参入がしやすく、今後しばらくはサービスの乱立が続くことが予想されます。中国においても当初はサービスの乱立が見られましたが、現在はWeChat PayAlipayの2つが主要なサービスとなっています。日本でも今後このようなサービスの淘汰が起きていくのか、市場の動向に注目です。

新たな台頭を見せるQRコードが、既存のクレジットカードや電子マネーなどを越えたキャッシュレス推進のツールとなるのか、日本社会はまさにその分かれ目にいます。QRコード決済サービスの提供者が店舗側、そして消費者にQRコード決済を行うメリットを明確に示していけるかどうかが、今後の命運を分ける鍵となるでしょう。

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